「ルポ虐待―大阪二児置き去り死事件/杉山春」

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)

「家見てもらうな、親見てもらえ」という言葉を聞いたことがある。
「嫁取り」に関して表面的な社会的地位や立場ではないけれど、
どのように育てたか、育てられたかということがポイントだということ。
本当に身もフタもないが、妻の実家が孫育ての支援をできるかどうか
リスクアセスメントの材料になるのかと思う。
文中で被告の父も夫も、どこか他人事のようなところがある。
育児を手伝ってはいる、かなりやっているのだが、ある種踏み込まない。
妻が相当に追いつめられているのだが見えていない。
そして見ないほうに行く。助長する周囲の人もいる。
本書では夫のほうの分析には紙面が割かれていないが
夫も父として子の養育の責任を担えない時
子育ての負の世代連鎖についてどのように支援をなしうるのか。


児童虐待に関する臨床的な知見は裁判で重んじられなかったという
ところが重い。
精神医学としての鑑定診断が間違っているということではない
だろうと思う。ただ精神科医療だけでは足りないのだ。

こどもは日々大きくなっていく。
「助けてもらうこと」が「できる」ことは力なのだと
伝えつづけること。